いつもツイートをいいねしてくれる下級国民の会の会長が。
文学賞を募集していたので。
作品募集!下級国民の会が文学賞を設立します。 - 上級国民に憧れる下級国民の会
下級国民の会の会員として1本、提出しようかな。
2008年に書いた悲しい物語を。
資本主義社会の学歴主義や競争主義、父親からの教育虐待や世間の圧力によって、望んでいなかったのに下級国民になってしまった男性の話。
なんか、引き込もりについて学ぶみたいな授業だったかな?
そこで、実際に教育虐待を受けて引きこもりになった人の資料から着想を得た。
元ネタ知ってる人がいたら教えてほしいけど。
でも、自分が就活に落ちまくった経験とか、窃視症とか視線恐怖症の人の体験談とかも混ぜてるので、実在する人物ではない。
そういうのを色々と脚色(オマージュ)して書いた。
はてなブログだから、増田文学、とも言うか。
いやあれはanonymousダイアリーじゃないとダメか。
では、そんなに長くないので、暇な人は読んでちょうだい。
とある大手銀行に、最終面接で不合格。
激しい怒りで自暴自棄、僕を構成しているもの全てが音をたて、砕け散っていく音を聞いた。
「絶対におかしい」という思い、「4回も質問したのに、どうして?」という気持ちでいっぱいだった。
しかし負け犬には変わりない。
周りの友人は、まるで腫れものに触れるかのように僕に接し、去っていった。
それから我が家も、僕を受け入れなくなった。
父は、今までは「お前はえらい!●●大生なんだからな!」と誉めていたのとは打って変わって、「俺はお前が息子であることが恥ずかしい!」と怒鳴り散らす。
僕と父の共通の知り合いの名を挙げ、「あそこんとのやつは弁護士になった」「あそこの家の息子は外資系で働いてものすごく稼いでいる」といった話をしてくる。
父が「民間の大手はあきらめろ。死ぬ気で勉強して、来年国家公務員になれ」と告げる。
自分が学生時代に行っていた、一日15時間の勉強伝説を交えながら、父は酒を飲む度、僕を情けない情けないと侮辱する。
残された僕の道はただ一つ、一年浪人して、国家公務員になること。
大企業に入ることが僕には不可能なようだ・・・せっかくいい大学に入ったのに!どうして!?
だが、そんなことを考えても仕方がない。
落ちた原因は誰のせいでもなく、全て自分にあり、全て自分に背負い込ませること。
自分自身の全否定。
それは、就活だけじゃない。性格や行動すべてを否定し、自分だけで背負いこむ。
それは、僕の前から去っていった友人が教えてくれたこと。企業を恨んでも、ひがみや嫉妬にしか聞こえない。
だから僕は、全てを自分の責任の下に置くことにしたのだ。
だが、いざ国家公務員の勉強をしようにも、時だけが無駄に過ぎていった。
この上ない孤独、生きてることの意味が、全くわからない。
誰かに愛されたいという気持ちに飢えていた。
だがそれも、不可能だった。
僕の誇りや自信は、全て失われた。
敗北者に選択権はなく、ただあるのは罪滅ぼし。
砂漠のように渇いた大地を踏みしめ、目の前がよくわからない歪んだ蜃気楼に向かって歩いているようだった。
それでも、数少ない友人の前ではピエロのように自分を捨て、馬鹿らしく振舞った。
明るい自分を見せつけることで「僕は誰よりも楽しく日々を過ごしているんだ」と、感じられると思ったからだ。
でもその後にやってくる、何という虚しさ。
「私立の学費は、公立の2倍以上だったんだ!」と、かつては僕の通っていた大学に誇りを抱いてくれた父も、失った。
僕という息子を産んだという誇り、僕を育てたという誇りは、父さんにはもう無い。
なんとかしなくては。
父が言うように、電車の中では、ボケっと突っ立ってないで、公務員試験に出る問題を解くことにした。だがいつもの電車なのに、部活動に励む高校生や男女のカップルが見せる明るい笑顔がすごく目立つ。
それに比べ、自分は一体何をしているのだろうか。
小学校の頃はいい中学校に、中学校の頃はいい高校に、高校生の頃はいい大学に、大学生の頃はいい仕事に・・・常に上ばかりを見つめ、決して僕は現在を生きていなかった。小説や自己啓発の本を読むと、そこには輝かしい青春の姿、人生の楽園でもあるような世界が描かれている。
あまりにも違いすぎる・・・
僕には、人間同士の触れ合いもなければ、誰かを本気で愛したり誰かから本気で愛されたりしたこともない。
でも電車の中で、ふと考えた。
僕と同じように、孤独で寂しい子がきっといるはずだ。
小説やテレビドラマのような、何か素敵な出会いがあるんじゃないか。
ある日、図書館で公務員試験の勉強をした帰り、何とはなく目をやると、一人のセーラー服を着た女の子と目が合った。
何となく、意識した。
相手も気づいた。その時の胸の高鳴り。僕もまだまだいけるんじゃないか?
しかしやはり、自分からは声をかけなかった。
でもその日から、僕は喜びに似たような感情で電車に乗ることができた。
しかし、そんな感情もすぐに変化していく。
僕は自分の頭の中でナンパのようなことをしながら、虚像を追っているだけだったのだ。
なんて愚かで、情けないんだろう。
その頃、僕は海外の企業で働いている姉と電車に乗る機会があり、近くのイタリアン・レストランで食事をご馳走になった。
その帰り、電車の中で姉から「電車の中なんだから、もっと普通にしていなさい。なんかあんた、カッコつけてるでしょ?」と言われた。
僕は、恥ずかしさで顔が熱くなった。
何かを見破られたようで、自分の醜く卑しい心を覗かれたようで、僕は姉の前から消えてしまいたかった。
女の子が側に来ると、僕はどうしても見てしまうのだ。
気付かれないようにチラ見のつもりだったが、もしかしたら無意識に、ジロジロ凝視してしまっていたかもしれない。
国家公務員になるまでは忘れようと、腹を括った。けど、楽しそうな学生やカップルの姿を見る度に、その決意は大きく揺らぎ、孤独を感じた。
そういう時は、急いで車輌を変え、「欲しがりません勝つまでは・・・」といった言葉を自分に言い聞かせた。
ところが、僕の通っている予備校には、予想に反して女の子がいた。
初めは「公務員の勉強をしにきているんだ僕は!」と言い聞かせるものの。
しかし心の奥底では、電車の中では無理でも、同じ教室なら、同じ目標なら、きっと・・・という不純な考えを持ち始めたのが、僕の全ての誤りだった。
ある日、授業が始まる前、近くの席に女の子のグループが座った。すると、何気なく目が合った。それから、僕は気になりだし、勉強に集中しようという気持ちも虚しく、そう思えば思うほど気になった。
また、姉に言われたことが頭を過ぎり、彼女達に、僕に変な下心があるのではないかと思われないようにと、必死に僕は願った。だがそんな不自然な態度に気付いた彼女達は、ヒソヒソと指で指しながら、こちらを向いて笑っていた。
僕はこの時、自分のやっていることは何て愚かで、恥ずかしいことだということを、彼女達から突きつけられたのだ。
僕は最低の男だ。
それからは、一種の女性恐怖症。
相手を横目で見るなんて絶対にやらない、そして、相手から自分に下心があるように思われないよう、必死だった。
でもそうすることで、僕は男女関わらず、誰も見ることができなくなってしまった。
そして、それがどんどん拡大、電車の中で女性がすぐ側に来るだけで心臓が高鳴り、唾液が出て、女に飢えた男のように、僕は女に飢えた醜い豚男なのか、僕を醜い者として見つめているのではないか。
歩いている時も、女性への視線は決して合わすまいと思った。
欲望の塊のような自分を悟られたくなかった。
そして「国家公務員になるんだ」という目標のためには、自分は女性などとは接しないほうが都合良く、専念できるんだ。
と自己暗示をかけ、国家公務員になるための勉強以外は全て、生活から排除しようとした。
そして欲望は、すべて自慰によって、自己管理しようとした。
しかし、海外で働いている姉に会いに行くため飛行機に乗った際、僕は、座席の一番前の通路側の席になり、何度も何度も目の前をスチュワーデスさんが通り過ぎ、そして、すぐ近くにスチュワーデスさんが待機している状況になってしまった。
今まで、逃げに逃げてきたのに、どうしたらいいのかという困惑が、一番強くなった。
飛行機に乗っている間、目線の置き場がない。だから僕は、僕に下心があるように思われないよう、目を閉じて、ずっと眠ったふりをしていた。
このとき、僕の頭にある考えがよぎったのだ。
たとえ、自分が苦心して国家公務員になっても、人間らしい生活は出来るのだろうか。女の子と楽しい日々を過ごせるのだろうか。本当に自由になれるのか。本当に生きていけるのか。
様々な思いが交錯するものの、とにかく、公務員試験合格と性格改善を絶対にしなければならないと僕は思った。
しかし、自分の性格がどんどんねじ曲がっているのも感じていた。
こんな性格を克服できるのかという不安、試験までの時間は刻一刻と近づいているし、家の中では、僕への風当たりは日に日に強くなっている。
僕には逃げ場はない、後ろに下がることは許されないんだ。
それでも、理屈で分かっていても、自分で自分をコントロールできないし、他人に話をすることさえ無理だった。公務員の勉強よりも、避けることに専念していた。
例えば、敢えて寝不足になって意識を鈍らせたり、両肘で目を隠したり、目立たぬようにしようと心がけた。僕には何の下心はないんだ、僕は人間のクズなんかじゃない。
そして電車の中では、男女を問わず、自分の目が相手を不快にするのではないかと思い始め、視線のコントロールが上手くできず、視界から人の存在を無くすためにはどうすればいいのか、視界から人が消えればいいのにといったことを考えるようになった。
目をつぶる、だけじゃない、その上から手の平で覆い隠す。
自分のちょっとした態度が、相手を不快にしてしまうのではないかという疑惑が消えることはなかった。通りすがりの人を意識し、下しか見れない。向かい合って話をするなんて、もってのほかだ。
その上、家に帰ると、父の罵声が鳴り響く。
もう、自分に未来なんて無いのではないだろうか。
ただ明日を恐れ、時が流れてゆくことを願うだけだった。僕のことを理解してくれる人は、本当に一人もいない。
おかしい。
公務員試験への勉強がほとんど手つかずになった12月、何だろうか、自分の思い通りに自分をコントロールできないといった、何か自分が今まで抑えつけてきた、自分の本来の願望がついに爆発して、一人歩きを始めたように感じた。
しかし理屈がわかったところで、現実の緊張と苦悩は日に日に増し、しだいに一日中離れない難題となり、解決することはなかった。
勉強に集中しなくては。
12月や1月は、僕が去年受けた大手企業も採用を始めるが、今の僕に、自分で自分のことを話すなんて出来るわけがない。
その頃、電車の中では、苦しさは頂点に極り、立ちながらでも寝たフリをしてただじっと我慢していた。
いつか発症するのではないか、四方八方囲まれ、目の置き場もなく、自分の視線すら怖い。
自分が何かをちらちら窺っているのが、相手を不快にするのではないか。
四方八方に視線をどんどんずらし、そして挙句の果てに下をうつむくが、でもそれでも、横目で覗いているのではないか?と、自分を詮索し続けた。
国家公務員に向けて勉強する前に、まずこちらを治さなければならないと思い、精神科受診。
初め行った所は、中年の男性医師で、数分間僕の話を聞くと、安定剤を飲んで様子を見ましょうという調子だった。
次に行った所は、毎回毎回、数種の薬を処方して終わり。
全く効果が無い。
もう電車に乗るには、かなりの努力と忍耐力がなければ無理になった。
まったく違う種類の電車に乗るのは、不安すぎる。あんなに嫌でたまらなかった家の存在は、電車や予備校に比べれば、安らげる唯一の場所だ。
しかし相変わらず、父の夜の言葉は、厳しさを増していった。
姉だけでなく、この時は弟も大学に進学して実家を離れていたので、家族三人。
この時ほど、日々が遅く感じたことはない。
これ以上の苦しさなんてあるのか。
毎日毎日、勉強などは手につかず、ただ、現実ではない夢の世界に憧れの妄想を抱き、眠ることに執着した。
だが緊張のため、眠ることすらできない。
そのため、無理に自分を疲れさせるため、激しい運動や自慰を行って眠りにつくといった、狂ったような行動を毎日やっていた。
明日が来てしまう、夜が明けてしまうことへの恐怖に耐えられず、一瞬でも全てを忘れたらいいのにと思った。
体の方は、白髪が異常なほど増え、眉毛は薄くなり、胃痛に苦しんでいた。
身も心もボロボロで、もう周りには、僕のことを思ってくれる人など一人もいなかった。
家族の者には信頼を失い、友人も全て失った。
精神的孤立だけじゃない、本当の孤独。
4月、就職活動も公務員受験も電車に乗ることも、もう僕は、何一つまともにできなくなっていた。
試験会場では、脂汗を流しながら、両肘を立て、目を隠しながら受験し、昼食は人気のないところを探して食べた。試験官は、僕がカンニングをしていると疑ってはいないだろうか?いや、試験態度がおかしい態度が悪いとチェックをし、就職活動と同じくまた不合格になるのではないか?と考え、僕の不安と緊張は、試験中だけでなく外にいる間はずっと続いた。
不合格の通知。
もう予備校にも行けず、図書館にも通えず、ただ朝から晩まで、家の中にいた。
親の「もう1年通わせてやるから、今度こそがんばって国家公務員になれ!予備校に行け!」という反対を押し切り、宅浪し続けた。
でも今度こそは、国家公務員になってやろうと決意もした。
この目標さえ達成すれば、自分の忌まわしい日々にピリオドを打つことができるのではないか?
早く終わらせたい、こんな日々を。
しかし、もう家族とすら正面を向いて話すことはできず、そもそも自分の部屋から出ることもできなくなっていた。
病状でいうと正視恐怖、視線恐怖のため、人通りのあるところは歩けないし、乗物もいっさい乗れなかったし、まして、人込みの中に入ることなど考えられなかった。
もう僕は、何もすることができないんだ。
父さん、もういいだろ?
俺もみんなと同じように、馬鹿をやりたいんだ。何もかも忘れて、ありのままの自分、感じたままに生きていきたいよ。周りの人がどう見たって、どう評価したってどうでもいいじゃないか。ミスのない生き方、堅実な生き方なんて、俺にはできないよ。
父さん、僕を、普通の人間、平凡でちっぽけな人間にしてくれよ。
みんなと同じでいいよ。
戻してくれよ。
そしてここから、主人公をザ・ワールド・イズ・マインのトシみたいに暴走させていく予定だったけど。
創作意欲が湧かなくておわり。