最近、ヘビロテで聴いてる曲がある。
冨田ラボ&ぷにぷに電機の「須臾の島」だ。
冨田ラボ20周年のアルバムにも、この曲は収録されているみたい。
www.jvcmusic.co.jp冨田ラボのアレンジ、民族音楽のようなテイスト、エレクトロな打ち込み音と、プリミティブなアコギの音、この人のアレンジはいつもカッコいい。
そこにぷにぷに電機の、耳障りのいい声で、催眠術をかけるような歌声が重なる。
映像もいい。金髪の女性ダンサーの踊り、奇妙で、この世のものではない異様さが出ていて素敵だ。
ぷにぷに電機が分裂したり、ダンサーの身体が伸縮したり器官が解体されるような映像で、この音楽を聴きながら映像を観ていると、意識が混濁してくるような陶酔感がある。
この世界を堪能するため、歌詞も調べた。
しかし、歌詞の詳細がわからなかった。
そこで、人力検索はてなで質問してみることした。
q.hatena.ne.jpid:punipuni501さんに回答してもらって、謎の一部がわかった。
mifuti juru muci(みふし ゆる むち)
kumori buddi kazi(くもり ぶでぃ かじ)
この歌詞も謎ではあるが、ハモっている部分で一番目立っている「ハイエー」について。
一体、なんだ・・・もう1度調べると、わかったことがある。
ameblo.jpクラシック音楽の音域の話。もこれはハイエーではなく、「High C」(ハイシー)らしいから、たぶん違うだろう。
やはり「須臾の島」という内容、そして歌詞の世界観から考えるに、民俗学的・宗教学的な現場で出てきそうな言葉ではある。
そこに目星をつけて調べると、興味深い記事があった。
「沖縄音楽総攬(下巻) 」のページだ。
columbia.jpDISC-3
V 八重山諸島民俗芸能篇
1. 祭祀音楽(正月御願/豊年祭〈穂利〉/盆祭/結願祭/節祭/種取祭/進水式/雨乞い/旅祈願/夜籠り)
●正月ユンタ
●正月ユンタ(世乞い)
●豊年願い唄(今日ぬ日)
●にうすいの唄
●思(うむ)いそ
●さーよい
●東(あーり)ぬ渡(とぅー)から
●いんきゃらぬ唄
●与那覇主(ゆなはしゆー)
●白保(しらふ)節
●夜雨(ゆあみ)節
●弥勒(みるく)節(石垣島白保)
●やーらよー節
●さんぐるろー
●とぅんちゃーま
●道唄《♪平良と友ぬ〜》
●弥勒(みるく)節〜しーざ踊(竹富島)
●仲良田(なからだ)節
●弥勒(みるく)節〈西表島祖納〉
●笠踊
●鎌踊
●ぴゅーながれ
●ぺんさ
●しらかがーDISC-4
●巻踊
●たてぶどる
●世乞(ゆーく)いジラマ
●世上(ゆーあ)ぎジラマ
●ぱいみジラマ
●角皿(しぬざら)ぬ唄
●中皿(さかざら)ぬ唄
●無蔵念仏(んぞにんぶちぃ)節
●阿弥陀仏(あみだんぶち)
●いらんぞーさ
●だーとぅだー
●おーぱんやージラバ
●節(しちぃ)ジラバ
●ぴょーし
●今日(きゆ)ぬ誇(ふく)らしゃ
●五尺手巾(ぐさくてぃさじ)
●くぐば
●今日が日(きゆかぴー)
●二月(にんがち)
●真謝乙女(まじやみやらび)
●うぶぬぴーだ
●種子取(たにどぅる)アヨー(石垣島白保)
●種子取(たにどぅる)アヨー(石垣島宮良)
●道唄《♪ハイエー戌子ぬ〜》
●巻唄
●しきどーよー
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ここで一つの仮説が浮かび上がる。
「須臾の島」は八重山諸島のことで、「ハイエー」は八重山諸島で用いられている言葉
という説が。
もちろん「須臾」ってのは、時間の単位のことで、全くそんな意図はないかもしれないけどね。
mainichi-kotoba.jp短い時間のこと。須は常用漢字に採用。仏教で、一昼夜の30分の1の時間。数の単位としては1000兆分の1。国際的な単位としてはナノ(10億分の1)、ピコ(1兆分の1)よりも小さいフェムトに相当する。
かといって「ハイエー」に、何の意味もないというわけではないはず。
八重山諸島に行って調査すれば「ハイエー」の謎も明らかにできるかもしれないが、そんな時間もお金もないゆえ、図書館とかで調べてみようかと考えたが。
まず、民俗学や宗教学に詳しいツイッターアカウントの人「幣束 (@goshuinchou) 」さんが、「ハイエー」について呟いていないかを調べた。
twitter.com「@goshuinchou ハイエー」「@goshuinchou はいえ」で呟き検索してみたが、該当はしなかった。
「@goshuinchou 八重山」だと、興味深いツイートがあったけどね。
あとまあググりゃわかるんで調べたい方は各自お調べてほしいんですけど、八重山の豊年祭には複数、一切撮影禁止の地区の祭がありドクトクノ来訪神が出てくる。カメラ類持ち込まなければ部外者も拝観できる地区もあるのでいつか行ってその神の姿を目に焼き付けたい。
— 幣束 (@goshuinchou) July 22, 2019
「独特の来訪神」がいるそうだ。
といっても、「ハイエー」が来訪神行事と関連しているとは、まだ断定できない。
「道唄《♪ハイエー戌子ぬ〜》」の、「戌子ぬ~」の方を先に明らかにした方がよさそうだ。
まず「ぬ~」について、これは「怒り、疑問視、代名詞、驚き」を表しているかもしれない。
japan-hougen.comでは「戌子」の方は何だろうか。
検索したところ、八重山諸島の1つ、竹富島のブログがヒットした。
www.taketomijima.jpNovember 24, 2012
祈願と幕舎張り 【種子取祭5日目】
11月19日のトゥルッキから
はじまったタナドゥイ(種子取祭)。昨日(23日)は
干支の戊子(つちのえね)の日。
竹富島では、
タナドゥイの祈願と幕舎張りが行われました。戊子の日は、
種子取祭でもっとも重要な一日である祈願の日。
午後1時30分から
竹富公民館執行部と神司一行は、
玻座間御嶽、世持御嶽、清明御嶽、根原屋を祈願します。
(チチヌニヌ タニドゥルヌ ニガイ)一方、午前8時から、
18歳から69歳までの男性たちは、
タナドゥイの奉納の舞台となる
世持御嶽のテントを設営しました。
(トゥマヤ張り、幕舎張り)
どうやらブログによると、「戊子の日(つちのえねのひ)」には、種子取祭が行われるみたいだ。
「戊子」については、中国の陰陽五行を土台とした算命学では、暗号異常干支というらしい。
xn--n8jx07h.cc
稲子取祭についてさらに調べると、星野リゾートがその祭りについて取材しているページがあった。
www.hoshinoresorts.com・・・そこで根原金殿は妹を幸本節瓦に嫁がせ、戊子つちのえね の日の効力を夫に伝えさせた。----たとえあなたが作る量と同じでも、兄の粟は、酒や料理ができあがったときに量が増える。また、戊子の日に種子を蒔いた作物は、己丑の日のそれとは違ってよく根づく----・・・
ここまでで少し、前進できた。
「ハイエー」は、戊子の日(つちのえねのひ)の、稲子取祭の際に用いられる言葉
この可能性が高い。
先述の「沖縄音楽総攬(下巻)」の楽曲の並びからも、伺える。
の順番ゆえ、種子取祭に関わる内容ではないだろうか。
それゆえ「ハイエー」は、「イーヤーサーサー、ハイ、ハイ」と同様、祝祭空間を創り出す掛け声や合いの手として機能している。
と思ったけど、違う可能性もある。
先述の「ぬ~」が、「怒り、疑問視、代名詞、驚き」ではなく、助詞や接続詞の可能性である記事があった。
www.zephyr.justhpbs.jp (戌子:つちのえ ね) 種取子祭5日目。
各家の家長は、それぞれ半間(畳半分)ほどの広さの畑に粟や麦、黍などの種子を蒔きます。(但し、現在ではほとんど行われていません。) また各家の女性たちを中心にイイヤチを作ります。イイヤチとは、イヒハツ(飯初:粟と糯米と小豆を混ぜた種子取祭用の餅)の義で、「慶来慶田城由来記」に記されたイハツのことです。 当日はチチヌニヌタニドゥル(戊子の種子取)と称されるように、もっとも重要な播種の日です。
この箇所にあるように、"チチヌニヌ"で、”戊子の”という意味だ。
ということは、「ハイエー戌子ぬ〜」の「戌子ぬ〜」の箇所も、「戌子の」というように、名詞+助詞になるのではないだろうか。
助詞の後、掛け声や合いの手等、感嘆詞が来るだろか。
「戌子の」と来たら、名詞が来るのが自然なような気がする。
「種子取祭」という名詞が。
しかしその場合は「タニドゥル(稲子取祭)」が来るだろう。「ハイエー」を用いているということは、稲子取祭とは別の意味がある可能性が十分にある。
また「ぬ~」と、伸ばしているのも気になるな。