逆寅次郎のルサンチマンの呼吸

独身弱者男性が全集中して編み出した、人間の無意識にあるもの全てを顕在化する技を伝授します。

独身男性がマウンティングされ蹂躙される映像が流れた「開運!なんでも鑑定団」(2022年4月26日放送)

何でも鑑定団が好きだ。
暗澹たる闇に向かって進んでいく鷺、西郷孤月の「月下飛鷺」の鷺に共感できたのも、この番組で紹介されてくれたおかげだったりもする。

だが今回の放送では、福澤朗の物凄く残酷な「呼びかけ」を見ることになった。
これは許されていいのか。
はてなーの弱者男性達よ。
月曜日のたわわとかに盛り上がるフェミニストやツイフェミのように、センサーしっかり機能させていこうや。
話題にもなってないが、何が起きたか、説明する。

40代後半の依頼人、宝石収集が趣味で、父親とその趣味を共有している。家宝である宝石を売るか売らないかで、父と話し合いになっている。
それで「鑑定団で価値をはっきりさせたいんです」という依頼者の要望に対して。
福澤は、こんなことを言いやがった。

「●●さんの奥さまとかは、なんとおっしゃってるんですか?」

だと?
なんで野暮でデリカシーの無い発言だよ?
「結婚していて当然だよね」という、暴力的な異性愛イデオロギーを、初対面の人間に押し付ける行為。
これはBPOに苦情を寄せてもおかしくないレベルじゃ、ねえのか?
露骨な下ネタとかの方がマシだと思えるけどな。

依頼人「まだ独身なので・・・」と、半笑いで応える。「今、独身だったんですか?」と、福澤は驚き。フォローしているのだろうか。そして今ちゃんがちゃんとフォローする。

「福澤さん…!本当に見抜く力がないですね。宝石の話をしているのに、VTR中に奥さんの話が出てこない。その辺でピーンと来ませんか?」

流石だね。わかってる、独身男性の気持ちに寄り添ってる。
会場は笑いに包まれる。
まあそんなこともあるよね。

ロイヤルブルーサファイヤ、「受け継いだら、相手の婚約指輪とかに」依頼人
片渕茜アナが「これを婚約指輪にしてくれるんですかー」と言う。
「高い宝石だったら婚約相手も満足してくれるよね」という、シンデレラストーリーの茶番が繰り広げられる。

そして鑑定結果が出る。200万円、すごい額だ。
加熱処理されて青が深すぎがゆえの価格。非加熱であれば縞模様がなく、1000万円とかになるらしい。
鑑定人は「将来値段が上がるかもしれない」と。
その鑑定人のコメントに対して福澤は、こう付け加えたんだ。

「もう少し待ってから、婚約指輪ってことですかね」

うわ、またかよ。
俺はこの発言に恐れおののいた。
これに関して、どう思うよ。

俺はこの現象を、福澤朗という既婚者の他者による、独身者のアイデンティティを不安定にさせる差別的行為だと感じた。「鬼滅の刃 無限列車編」で言うところの精神の核に触れ、破壊するような行為だ。
なぜ精神の核か?
それは40代に取って独身か否かというのは、この資本主義、恋愛至上主義イデオロギーがのさばる現代社会において、コンプレックスを喚起する極めて重要な事柄だからよ。

(引用元:「最強伝説黒沢」1巻 - 福本伸行

この漫画に出てくる黒沢は、44歳の独身だ。常に独身であること、孤独である現実に、打ちひしがれている。


テレビを付けると、家族4人が旅館に泊まり、仲良くニンテンドースイッチに興じるCMを観て、自らを相対化し、狭いワンルームの部屋で劣等感と自己嫌悪の時間が訪れる。


「別に羨ましくないんだし」というルサンチマンで耐えられない場合もある。静かな部屋で、時計が秒針を噛む音だけが響く度、精神が少しずつえぐられていく。

もちろん、依頼人の方から、受け継いだサファイヤを婚約指輪にしますというシンデレラストーリーの提示が事前にされていた。
「受け継いだら、相手の婚約指輪とかに」という発言によって。

宝石の価値が高かったら婚約相手への指輪にする、という物語が、独身男性の側から提示される契機があったゆえに、福澤の罪はあまり際立たないようにも思える。
そして今ちゃんは再度、フォローする。

「とりあえず老人ホーム代は、何とか捻出してください」

と。
独身男性に「独身である」ということを自覚させないようにするかのように、話題を父親との関係性の方に向ける。
今ちゃんの優しさ、福澤の残酷さ、それを見ることになった。他者との出会いによって、アイデンティテイは構成されていく。

福澤朗に出会うこと、福澤からの発言、「呼びかけ」によって、「独身である」という社会的アイデンティティを強く意識させられることになった。

もちろん「意識させられた」のは、俺の推測だ。
福澤とのやり取りで、依頼人はどういう感情を抱いたか、自身のアイデンティテイに影響を与えたかなどは、わからない。
だが、同じ独身者、生涯独身者予備軍である俺は、同じ社会的アイデンティティを持つ依頼人に共感し、自身を投影し、同一化していた。

その状態で、福澤の発言、を聞いたら、不快感を喚起させれる。
独身であるという社会的属性を強く認識させられ、既婚者との相対化を強制させられ、自己愛に影響が及ぶ。
もちろん福澤に加害感情なんてのはなかったのかもしれない。
うっかり一度目はまあ、発言として仕方ないとしても。
だが一度目の失言を顧みることなく、二度も!

福澤は恐らく無意識だろうが「常に結婚できる」「結婚できるのが当たり前」という支配的イデオロギーを前提にして、「宝石の価値が上がったら婚約指輪にしましょう」と、呼びかけた。
既婚者のアイデンティティを持たない独身男性に対して、結婚する未来を、意識させた。無責任で根拠のない未来を、押しつけた!!
その未来が未達になった時、どのような感情になるのか?
想像できないのだろうか。
俺たちの苦難と悲哀を。あらゆる方向から飛んでくるイデオロギーの産物が、弱者男性にとっての怒りのデスロードを舗装し続ける。その道を弱者男性は、ルサンチマンを抱きながら歩き続けるという現実を。

確かに出品者の方から、婚約指輪の話題は出ていた。
その話の延長線上がゆえに、別に福澤は悪くないのだろうか?
ディレクターがカンペを出していたのか。
この指輪物語も、番組が考えたものだとしたら、物凄く残酷な物語だ。だってこの物語は、主人公にとって指輪を与える相手が現れるのかという保証は、どこにもないんだからな。

この無意識の暴力、既婚者という支配的イデオロギーによる、独身男性へのマウンティング行為。
ジョジョに例えるなら「自分が悪だと気づいていないもっともドス黒い悪」だ。


ジョジョの奇妙な冒険 第6部 モノクロ版 10 [ 荒木飛呂彦 ]

このアナウンサーには今後も注目していきたい。
そしてこういう無意識に与えられる暴力・差別は、自尊心に影響を受けるがゆえ、拾い上げていかなければ、ならない!

(続編:【悲劇の再来】独身男性がマウンティングされ蹂躙される映像が流れた「開運!なんでも鑑定団」